国際税務ライブラリ ・ 海外進出

海外企業買収時の税務

黒澤 翔 公認会計士・税理士初出 2023 年 3 月(kurosawa-cpa.com)

本稿は初出時点の制度に基づく基礎解説です。その後の税制改正により取扱いが変わっている場合があります。

この記事の内容

  • Due Diligence(デュー・デリジェンス)とは?
  • 税務デュー・デリジェンスの目的
  • 税務デュー・デリジェンスの主な確認事項

コチラの記事では海外に駐在員事務所、支店、または子会社を立ち上げる場合の課税関係について解説しました。

一方、海外進出時のもう一つの進出形態として、現地の会社を買収するという手段もあります。

買収の場合、対象会社は既に現地で事業を営んでいるため、新たに支店や子会社等を立ち上げる場合と比べてスムーズに現地で事業を開始でき、時間を節約できるというメリットがあります。

一方で、既に事業を営んでいるため、既に債権債務を有しており、また様々なリスクを抱えている可能性があります。

そこで、今回は海外企業の買収時に税務上の観点から留意すべき事項について解説していきます。

具体的には「Due Diligence」と呼ばれる作業を実施し、買収対象会社のリスクを洗い出すことが必要となります。

買収時はDue Diligence(DD:デュー・デリジェンス)が必要となる

企業買収を行う際は、まずDue Diligence(DD:デュー・デリジェンス)を実施する必要があります。

上記の通り、海外の企業を買収する場合、その企業がどのような経営状況にあるか、重大なリスクを有していないかなどは買収意思決定にあたって重要な判断要素となります。

このような買収先の状態を把握するために実施するのがDue Diligenceです。

買収してからは契約内容は変えられませんが、買収前にDue Diligenceによって問題点等を見つけた場合、契約にその問題に関する事項を盛り込んだり、リスクが大きすぎると判断する場合には買収を取りやめることも可能です。

そのため、買収にあたってDue Diligenceを行うことは非常に重要となっています。

なお、一口にDue Diligenceといっても、その調査内容は様々あります。

DDの主な種類英名調査対象
事業デュー・デリジェンスCommercial Due Diligence (CDD)経営や事業の状況など
財務デュー・デリジェンスFinancial Due Diligence (FDD)会社の財政状態など
法務デュー・デリジェンスLegal Due Diligence (LDD)許認可や訴訟の有無など
税務デュー・デリジェンスTax Due Diligence (TDD)税務申告内容や納税状況
ITデュー・デリジェンスIT Due Diligence (ITDD)情報システム
人事デュー・デリジェンスHR Due Diligence (HRDD)人事制度など

今回はこの中でも特に税務デュー・デリジェンスについて詳しく解説します。

税務DDの主な目的

Due Diligenceの中でもTax Due Diligence(税務DD)は以下の理由から非常に重要な調査となります。

税務DDは、主に対象企業の過去の税務申告内容や納税状況、税務処理などを調査し、税務リスクを洗い出すことを目的としています。

このとき、過去の状況のみならず、現在の税務ポジションや、買収による影響など将来のことまで考えることが重要です。

税務DDによって重大な税務リスクが発見された場合、税務リスクを軽減するスキームの検討を行ったり、あまりにもリスクが大きすぎる場合には買収を取りやめることも検討しなければいけません。

税務DDの主な確認事項

海外企業を買収する際の税務DDは、現地税制に基づき対象会社の税務の状況を確認する必要があるため、基本的に現地の税務専門家に依頼することになります。

税務DDにおける主な確認事項は以下の通りです。

税務DDは将来のことも考えて実施する

税務ストラクチャーは、例えば税務ポジションなどを有効に活用するためのスキーム検討など、将来の税務リスクをコントロールすることを目的として実施するものです。

税務DDによって洗い出された過去の税務リスクや現在の税務ポジションは、将来の税務上のリスクを減らしたり、現状の税務ポジションを有効に活かすために、税務ストラクチャーに反映していくことが重要です。

適切な税務ストラクチャーを実施するためにも、税務DDでは以下の事項を検討することが重要です。

まとめ

以上、今回は海外企業の買収時に税務DDが必要となること、そして税務DDにおいて一般的に検討すべきことを解説しました。

今回のポイントは以下の通りです。

  • 買収の場合、スムーズに現地で事業を開始でき、時間を節約できるというメリットがある一方、様々なリスクを抱えている可能性がある
  • Due Diligenceは買収先の経営状況や財政状態、リスクの有無などを把握する目的で実施する
  • 税務DDは、対象企業の過去の税務申告内容等を調査し、税務リスクを洗い出すことを目的としており、過去の状況のみならず、現在の税務ポジションや、買収による影響など将来のことまで考えることが重要
  • 買収前に税務DDによって問題点等を見つけた場合、契約にその問題への対応を盛り込んだり、リスクが大きすぎると判断する場合には買収を取りやめることも可能

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黒澤 翔

xBridge Advisory Managing Director / 公認会計士・税理士・MBA

プロフィール

本稿は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の案件についての税務上の助言ではありません。