国際税務ライブラリ ・ 海外事業の拡大

海外事業の拡大時に留意すべき租税回避対応の税制

黒澤 翔 公認会計士・税理士初出 2023 年 4 月(kurosawa-cpa.com)

本稿は初出時点の制度に基づく基礎解説です。その後の税制改正により取扱いが変わっている場合があります。

この記事の内容

  • 租税回避対応の税制とは?
  • 海外事業拡大時に留意すべき3つの税制
  • 移転価格税制、タックス・ヘイブン対策税制、過大支払利子税制の簡単な概要

海外進出後に現地でのビジネスが拡大してくると、海外ビジネスから得られる利益も徐々に大きくなってくるかと思います。

この利益には当然税金がかかってくるわけですが、この税金をなんとかして抑えられないかと考えることは企業経営者にとって自然なことかと思います。

しかし、国際税務上は過度な租税回避を防止するために様々な制度が設けられているため、安易な節税は税務リスクを高めるだけであり、また租税回避の意図がなくてもこれらの制度に抵触してしまう可能性があります。

そこで、今回は租税回避を防止するための制度の中でも特に注意すべき税制について解説していきます。

具体的には「移転価格税制」、「タックス・ヘイブン対策税制」、「過大支払利子税制」が今回の対象になります。

移転価格税制

日本は世界の中でも比較的高税率国にあり、海外子会社が低税率国にある場合、日本で税金を払うよりも海外子会社で税金を払う方がグループ全体としての税金は抑えられることになります。

そのため、企業側の視点から見た場合、日本の所得を海外子会社に移転させたいというインセンティブが働きます。

このような場合、例えば以下のような方法で所得を海外子会社に移転できる可能性があります。

しかし、これらの方法は何れも移転価格税制上の問題になる可能性が高いです。

移転価格税制とは、企業グループ間の取引価格を利用して所得が他国に移転することを防止するための制度です。

移転価格税制については別途シリーズで解説していますので、詳しくはこれらの記事をご参照下さい。

過大支払利子税制

さきほどの考え方と似ていますが、税率が低い国にある海外子会社の所得を増やし、代わりに高税率国である日本にある親会社の所得を減らす方法として、日本親会社から海外子会社から多額の借り入れを行うことが考えられます。

これは、日本親会社が税率の低い国にある海外子会社から多額の借入を行った場合、利息という形で日本親会社の所得が海外子会社に移転するため、グループ全体の税負担が軽くなる可能性があるからです。

しかし、国際税務上はこのようなスキームを用いて過度な租税回避行為が行われることを防ぐため、上記の移転価格税制に加え、支払利子が所得の一定割合を超える場合に損金算入を制限する過大支払利子税制が用意されています。

過大支払利子税制については以下の記事で解説していますので確認してみて下さい。

タックス・ヘイブン対策税制

グループ全体の税金を節約する方法として、海外子会社をより税率が低い国に移転したり、税率が低い国に海外子会社を設立し、従来日本親会社や他の子会社で実施していた事業をその海外子会社に移転するという考え方があります。

この場合、海外子会社の現地所得に対して発生していた税金が極端な例ではゼロになったり、従来日本の高税率が課されていた事業の利益に対する税金を節約することが可能になります。

しかし、このようなケースにおいてはタックス・ヘイブン対策税制が問題になってきます。

タックス・ヘイブン対策税制については別途シリーズで解説していますので、詳しくはこれらの記事をご参照下さい。

まとめ

以上、海外事業が拡大し利益が増えてきた段階で留意すべき、過度な租税回避を防止するための税制を紹介しました。

今回のポイントは以下の通りです。

  • 国際税務上は過度な租税回避を防止するために様々な制度が設けられているため、安易な節税は税務リスクを高めるだけであり、また租税回避の意図がなくてもこれらの制度に抵触してしまう可能性がある
  • 日本親会社の所得を低税率国にある海外子会社に移転させようとすると移転価格税制上問題になる可能性がある
  • 海外子会社からの借り入れを使ったスキームの場合、過大支払利子税制にも注意
  • 低税率国にある海外子会社の所得は日本で合算課税の対象になる可能性がある

海外子会社の売却・買収のご相談

海外子会社の売却や、海外企業の買収をご検討の場合は、条件の整理からご相談いただけます。

買収希望条件を登録する

黒澤 翔

xBridge Advisory Managing Director / 公認会計士・税理士・MBA

プロフィール

本稿は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の案件についての税務上の助言ではありません。