国際税務ライブラリ ・ 海外事業からの撤退

海外子会社の清算

黒澤 翔 公認会計士・税理士初出 2023 年 4 月(kurosawa-cpa.com)

本稿は初出時点の制度に基づく基礎解説です。その後の税制改正により取扱いが変わっている場合があります。

この記事の内容

  • 海外子会社清算時の会計上の損益
  • 海外子会社清算時の税務上の損益と課税を具体例と共に紹介
  • 海外現地ので課税にも留意

今回は海外子会社を清算した場合の課税関係です。

海外進出したものの思ったように業績が伸びず、やむを得ず海外事業から撤退する場合などに、海外子会社の売却先が見つからず、海外子会社を清算するケースがあるかと思います。

この場合、海外子会社は資産・負債を整理した上で、日本親会社に残余財産の分配を行いますが、このときに日本と海外現地で課税が発生する可能性があります。

ポイントは以下3点となりますので、これらを頭に入れながら解説をお読み頂ければと思います。

会計上はシンプルに投資簿価と残余財産分配額の差額が清算損益

海外子会社が清算する場合、日本親会社は帳簿上の海外子会社に対する投資簿価を海外子会社からの残余財産分配により回収するため、会計上の損益はシンプルに残余財産分配額と投資簿価の差額になります。

単純化した以下のケースだと、日本親会社が計上する子会社株式簿価が5,000に対して、海外子会社からの残余財産分配額は5,000のため、清算時に日本親会社で生じる損益はゼロとなります。

税務上はみなし配当と株式譲渡損益の2種類の損益が生じる

一方で日本親会社の日本での課税関係を明らかにするためには、先ほどの会計上の清算損益を「みなし配当」と「株式譲渡損益」に分解する必要があります。

そして、この「みなし配当」と「株式譲渡損益」とでは課税関係が異なってきます。

「対応する資本金等の額」とは株主等から出資を受けた金額であり、いわゆるBS上の資本金と資本剰余金のことを指します。

そのため、「みなし配当」はBS上のいわゆる利益剰余金部分となり、「残余財産分配額 - みなし配当」はつまり「対応する資本金等の額」であり、これはBS上の資本金と資本剰余金部分となります。

具体的な計算例

先ほどの単純化した例で税務上のみなし配当と株式譲渡損益を算定し、どのような課税が生じるかを見てみます。

【みなし配当と譲渡損益の算定】

みなし配当 = 残余財産分配額 5,000 − 対応する資本金等の額 1,000 = 4,000

譲渡損益 = (残余財産分配額 5,000 − みなし配当 4,000)− 譲渡原価 5,000 = ▲4,000

【課税所得への影響額の算定】

みなし配当に対する外国子会社配当益金不算入制度の適用:4,000 x 5% = 200

譲渡損益に対する課税:譲渡損▲4,000が損金算入

課税所得への影響額合計:200 + ▲4,000 = ▲3,800

会計上では損益ゼロとなってたにも関わらず、税務上は所得の節約が生じています。

これは、税務上は4,000の配当をもらって、4,000の株式譲渡損を計上したと取り扱われるためです。

海外現地での課税にも留意

これまで海外子会社を清算した場合の日本親会社に対する課税関係を解説してきましたが、海外子会社がある国での現地課税にも留意が必要です。

みなし配当部分に外国子会社配当益金不算入制度が適用される場合、現地の源泉税について外国税額控除の適用はでき、この源泉税は純粋な税務コストとなります。

まとめ

以上、今回は海外子会社を清算した場合の課税関係について解説しました。

今回のポイントは以下の通りです。

  • 海外子会社が清算した場合、税務上はみなし配当と株式譲渡損益の2種類の損益が生じる
  • みなし配当は海外子会社BS上のいわゆる利益剰余金部分
  • 株式譲渡損益は親会社BSの子会社株式簿価と、海外子会社BS上の資本金と資本剰余金部分の差額
  • みなし配当部分には外国子会社配当益金不算入制度の適用が可能
  • 海外でもみなし配当課税により源泉税が課されるケースがあることに留意

海外子会社の売却・買収のご相談

海外子会社の売却や、海外企業の買収をご検討の場合は、条件の整理からご相談いただけます。

買収希望条件を登録する

黒澤 翔

xBridge Advisory Managing Director / 公認会計士・税理士・MBA

プロフィール

本稿は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の案件についての税務上の助言ではありません。